Microsoftの専門ニュースサイト「Windows Latest」など複数のメディアの報道によると、2025年10月に公開されたWindowsのセキュリティ更新プログラムをインストールした一部のPCで、再起動時にBitLockerの回復キーの入力を求められる不具合が確認されています。
この画面が表示された際に回復キーが不明な場合、ドライブは暗号化されたままとなり、OSの起動やデータへのアクセスができなくなってしまう可能性があります。BitLockerはWindowsに標準搭載されたデータ保護機能ですが、予期せぬタイミングでこの回復モードが起動してしまうことが問題となっています。
なお、すでにMicrosoftはこの不具合を認識しており、KIRにて対処済みとのこと。企業・組織でこのKIRを適用したい場合はMicrosoftのビジネス向けサポートへ連絡してください。
不具合の詳細と影響を受けるシステム
1. 発生する事象
更新プログラムのインストール後、PCの起動または再起動時に、Windowsが立ち上がらずBitLocker回復画面が表示される現象が発生します。この画面で正しい回復キーを入力しない限り、PCは起動できません。
BleepingComputerによると、一度回復キーを入力してPCが再起動すれば、その後はBitLockerのプロンプトなしに通常通り起動するとのことですが、回復キーの確認・入力という手間が発生します。
2. 影響を受けるプラットフォームと更新プログラム
Microsoftは、2025年10月15日以降にリリースされた更新プログラムを適用した以下のプラットフォームに影響があるとしています。
| プラットフォーム | 対象のセキュリティ更新プログラム(KB番号) |
|---|---|
| Windows 11 バージョン25H2 | KB5066835など |
| Windows 11 バージョン24H2 | KB5066835など |
| Windows 10 バージョン22H2 | KB5066791など |
3. 主な影響対象:「Connected Standby」をサポートするIntel PC
Microsoftの調査では、この不具合は主にConnected Standby(モダンスタンバイ)機能をサポートするIntel製PCに影響を及ぼすとされています。この機能は、低電力モード時でもネットワーク接続を維持する比較的新しいPCで多くサポートされている技術です。
ご自身のPCがConnected Standbyに対応しているかどうかは、コマンドプロンプトやPowerShellでpowercfg /aというコマンドを実行し、「スタンバイ (S0 低電力アイドル)」がサポートされているかを確認できます。
最も重要な対策:BitLocker回復キーの確認とバックアップ
この問題の最も効果的な回避策は、BitLocker回復キーを事前に確認し、安全な場所にバックアップしておくことです。
特にWindows 11 バージョン24H2以降では、BitLockerがデフォルトで有効になっているPCも多く、ユーザー自身が意識せずドライブが暗号化されている可能性があります。
1. BitLocker回復キーの確認方法
回復キーの取得方法は複数提供されていますが、MicrosoftアカウントでサインインしてPCを利用している場合、自動的にアカウントに保存されている可能性が高いです。
別のPCやスマートフォンから以下のMicrosoftの専用ページにアクセスし、回復キーを確認してください。
2. BitLockerの有効/無効の確認
BitLockerが有効になっているか確認するには、Windowsの「設定」アプリから「プライバシーとセキュリティ」→「デバイスの暗号化」を確認します。有効になっている場合は、ドライブの暗号化が実行されています。
今回の不具合から学ぶ教訓:「公式ランサムウェア」とも揶揄されるBitLockerの危険性
今回の予期せぬ回復モードの発生は、セキュリティ機能であるBitLockerが、設定や運用を誤ると「Microsoftの公式ランサムウェア」と揶揄されるほど、システムへのアクセスを完全に妨げてしまう危険性を改めて示しました。ランサムウェアがデータを暗号化して解除キーを要求するのと同じように、BitLockerも回復キーがなければデータにアクセスできません。
もしものための復旧手順の再認識が不可欠
BitLockerは、起動環境の変更やBIOS/UEFIのアップデート、そして今回のWindows UpdateのようなOSレベルの変更など、システム構成の重要な変更を検出すると、保護のために回復モードに入るように設計されています。
この予期せぬ事態に備え、以下の点を徹底しておくことが極めて重要です。
- 回復キーの定期的な確認と物理的な保管: Microsoftアカウントに依存せず、印刷またはUSBメモリなどにキーを保存し、安全な場所に保管する。
- 組織での管理体制の確立: 企業環境では、回復キーを一元的に管理する仕組み(例:Active Directory)が機能しているか、定期的にチェックする。
今回の不具合はMicrosoftによって現在も調査中ですが、個人ユーザー・組織ユーザーともに、回復キーのバックアップがデータ損失を防ぐための最も重要な対策となります。
BitLocker関連の不具合は定期的に発生しているので、利用中のユーザーは今回の件を教訓に、しっかり回復キーを保管しておくようにしてください。

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