皆さん、「NAS」ってご存知ですか?ややマニアックな存在なので知らない方も多いかと思いますが、簡単に言うと【ネットに繋がる外付けHDD】の事。もちろん、「HDD」だけでなく「SSD」も機種によりますが搭載できます。
一般的な「外付けHDD」は、パソコンと1対1で接続して使用します。別のパソコンで使いたい場合は、一度「外付けHDD」を取り外し、再度別のパソコンに繋ぎなおす必要があります。
しかしながら、「NAS」をルーターやハブなどに接続して設置すれば、複数のパソコン(Windows/Mac)やiPhone・iPadといったスマホ/タブレットからもデータの共有/閲覧等が可能になるんです!
そのため、パソコンのデータバックアップ用として、家族写真や動画の共有、音楽ファイルサーバーとしてなどなど、様々な使い方が出来るのが特徴です。そしてHDDをRAID1構成にしておけば、HDD故障時のデータ損失をある程度防ぐことも可能です。設置も意外と簡単なので、ぜひ皆さんも挑戦してみてはいかがでしょうか?
本日はまず手始めとして、「NAS」とはどういうものか?また、何が便利で何が出来るのか?そしてNASを選ぶ際のポイントや、おすすめ・人気の「NAS」メーカーについて簡単に解説したいと思います。
「NAS」とはどういうもの?
まず「NAS」とはどういうものかということについて簡単に解説しておきます。
「NAS」とは【ネットワーク接続ハードディスク(Network Attached Storage)】の略で、LAN/ネットワーク上の複数のパソコンやスマホ、タブレット、DLNA対応テレビなどで様々なデータを共有することができる、「LAN接続タイプの外付けHDD」を指します。ちなみに、一般的な「外付けHDD」は【DAS(Direct Attached Storage)】とも言います。
通常の「外付けHDD」や「USBメモリ」などは、パソコンに1対1で接続して使用するのが原則であり、1台の「外付けHDD」に保存したデータを他のパソコンで共有して使うためには、一度接続を解除して別のパソコンにケーブルを挿し直す必要があります。また、使用するには接続しているパソコンの電源を“オン”にしておく必要があります。
対して「NAS」の場合、内部にデータの読み書きを制御するCPUや独自のOSが組み込まれており、NAS単体でファイルサーバーとして動作します。そのため、ルーターやハブのLANポートに繋ぐだけで、簡単に複数のパソコンやスマホ/タブレットなどからデータの共有が可能になるのです。「NAS」は基本的に常時電源オンが原則ですが、消費電力を抑えたモデルが多く、あまり気にする必要はないと思います。機種によってはWOLを使った更なる省電力設定なども用意されていたりします。
そして「NAS」に共有フォルダーを作成すれば、「NAS」と同じLAN内で接続されているパソコンやスマホ、タブレット、テレビなどで、手軽に共有フォルダーにアクセスし、データを保存したり閲覧する事ができるようになります。また、設定次第では外出先などからインターネットによるアクセスも可能になるので、様々な使い方が可能です。
「NAS」とは何が便利で何が出来るのか?
「NAS」を設置すれば、複数の端末からいつでも手軽に各種データにアクセスできるようになるのが最大の利点です。逆に言えば、1人暮らしでパソコンは1台のみ、特にそれで不自由していなければ、高価な「NAS」を購入する必要は無いかもしれません。
「NAS」の利用用途としては、一般的にWindowsやMacといったパソコンのデータバックアップ(MacのTimeMachineも機種によっては利用可能)、写真や動画、音楽ファイルのバックアップやデータ共有、そして頑張ればWordPressの設置なども可能です。
WindowsやMacのデータをバックアップしておけば、パソコンが壊れた際の復旧作業が格段に楽になります。メーカーによっては自動差分バックアップにも対応しているので、非常に便利です。また、家族写真や動画を「NAS」に保存しておけば、データのバックアップだけでなく、対応するスマホやタブレット、テレビなどで簡単に視聴することが出来る様になります。音楽データを保存し、専用アプリなどを使ってスマホやタブレットで簡単に音楽を楽しむことも出来ます。Synologyのアプリを使えば、iPhoneの写真を自動的に「NAS」に保存することも可能。iPhoneの容量/ストレージ不足でお悩みの方にも良いでしょう。6月から無料無制限バックアップが出来なくなる「Googleフォト」の代替としても良いかもしれません。
他にメーカーにもよりますが、ネットワークカメラを接続することで、防犯/監視カメラとして利用することも可能になりますし、Synologyの「NAS」なら“ほぼSlack”なチャットアプリが使えたり、メールサーバーとしても利用できたりします。業務用に簡易データサーバーとして運用するのも良いでしょうね。
とにかく、単純なデータバックアップや共有だけでなく、最近はやろうと思えば色々高度なことも可能になっているのが特徴です。もちろん、これらはメーカーによって様々な特徴があるので、購入時は事前によくメーカーのホームページ等で確認しておきましょう。
なお、「NAS」では2台以上のHDDを利用するのがデフォルトになる事が多く、その際には【RAID1】構成がメインとなります。これは例えば【3TB+3TB=6TB】の2台のHDDを設置すると、常に同じデータをそれぞれのHDDに書き込みます。これによって、例えばどちらかのHDDが故障しても、もう一つの正常なHDDからデータを復旧させることが可能になるというものです。ただし、当然のことながら使用できる容量は半分になり、実質容量は【3TB】となります。それでも「NAS」の利用はデータをバックアップすることが主眼にあるので、自分も現在は【RAID1】構成で利用しています。
「NAS」の選び方ポイント解説
では実際に「NAS」を購入する場合、どのメーカーのどんな製品を選べば良いのでしょうか?簡単に管理人が考えるポイントをまとめておきたいと思います。
HDD内蔵の「完成品」タイプか、自由度の高い「NASキット」タイプか。
まず「NAS」を購入するにあたって、HDD内蔵の「完成品」タイプ、もしくはHDD別売りの「NASキット」タイプの2パターンがあります。それぞれ一長一短あるので、よく考慮しておきましょう。
1.HDD内蔵の「完成品」タイプ
その名の通り、最初からHDDが内蔵され、届いたら電源オンにするだけですぐに使える「完成品」タイプの「NAS」です。
この「完成品」タイプの「NAS」は、とにかく無駄な手間隙がかからず、初心者でも安心して使用できるのが特徴です。HDDの容量も複数用意されていることが多いですし、「NAS」に最適なHDDがあらかじめ搭載されていることが多く、初めて「NAS」を買うならこの「完成品」タイプが便利かもしれません。
ただし、拡張性に乏しく、HDDの入れ替えなどが面倒な場合もあります。
一般的に、日本でもユーザーが多い「I-O DATA」や「BUFFALO」社製のNASはこのような「完成品」タイプが多いです。
自分も最初に購入したのは「BUFFALO」のNASで5年ほど使っていますが、今でも動画や写真のバックアップ/閲覧には問題なく使えています。しかし、アプリの使い勝手がイマイチのため、今回は「Synology」のNASキットに乗り換えました。
2.HDD別売りの「NASキット」タイプ
最近人気なのが、このSynologyの製品のように、HDDは内蔵されておらず外箱だけ用意された「NASキット」タイプになります。
これなら自分で好きな容量や性能のHDDやSSDを装着することが出来るので、自分の思い通りの「NAS」を組み立てることが出来ます。また、「Synology」や「QNAP」などの「NASキット」はアプリなども充実しており、使い勝手が良いのも特徴です。また、「TerraMaster」という新興メーカーもあり、こちらはまだアプリは充実していないものの、価格の割りに性能が高いのが特徴です。
1ベイ、2ベイ、4ベイ?
次に、「NAS」に搭載されるHDDについて。安価なモデルは1ベイタイプもありますが、先ほど述べたようにデータバックアップの観点からは、できれば2ベイ以上の「NAS」を選択するのがおすすめです。【RAID1】にて構成することで、どちらかのHDDが故障しても、もう一方の正常なHDDからデータを復旧させることが可能になります。
もちろん、手軽に利用可能な共用サーバーとして、割り切って1ベイタイプを使うのもありだとは思います。このあたりはご自身の利用環境に応じて選択してくださいね。
→RAIDレベルを理解しよう|@IT(外部サイトです)
NAS用HDDの選び方
HDD内蔵タイプの「NAS」を購入する場合は不要ですが、Synologyの「NASキット」などを購入する場合は、HDDを別途購入する必要があります。HDDも多数のメーカーがありますし、それぞれ価格と性能のバランスがあるので、気になる人は自分で色々調べると良いでしょう。
最近主流なのは、WD(Western Digital)のHDDです。安価なのは“WD Blue”HDDですが、NAS用に専用の“WD Red”HDDも発売されています。Blueに比べると、RedはNASに特化している分、高性能ですがやや割高になります。自分はとりあえず家に余っていた“WD Blue”を使用していますが、金銭面で問題ないなら“WD Red”がおすすめです。
容量的には、現在なら【3TB~4TB】あたりが容量と価格のバランスが良いかと思います。
おすすめ・人気の「NAS」メーカーは?
前置きが長くなりましたが、最近「NAS」で人気なのは、「Synology」だと思います。「NASキット」タイプなのでややとっつき難いかもしれませんが、組み立てはプラモデル作るよりも簡単。HDD挿し込んでネジ締めるだけです。海外メーカーではありますが、日本語解説が充実しているのもポイント。そしてネット上の解説情報サイトが多いのも便利です。
ただ、やはり日本のメーカー製が良いというなら、「I-O DATA」や「BUFFALO」の「HDD内蔵完成品」タイプが良いでしょう。届いたら電源オンしてすぐに使えるのは、初心者にはありがたいと思います。
また、管理人も最後まで「Synology」と悩んだのが、「QNAP」の「NASキット」です。管理人が購入した「Synology DS216j」が22,000円程度なのに対し、「QNAP TS-231P」は25,000円程度と、若干高くなります。しかし、ハードウェアの性能では「QNAP TS-231P」が若干上回っています。
様々な情報を吟味し、スペックだけでなく、使い勝手やネットの情報量の多さを勘案し、今回管理人が購入したのは、【Synology DS216j】になりました。現在実際に使っていますが、事前の情報通り使い勝手はかなり良好。初期設定もすんなり出来ましたし、Windows 10 PCからのアクセスも簡単。インターネットを介して外出時にスマホからアクセスするのも全く問題ありませんでした。
各種Synology製アプリもなかなかいい感じ。個人的には買ってよかったと思います。ただし、やや処理が重なるとCPU使用率が100%に張り付いたりするので、スペック面では「QNAP TS-231P」も気にはなりますね。
今回管理人は【Synology DS216j】を購入しましたが、利用環境によっては他のNASメーカーでも問題ないでしょう。ご自身でスペックや価格、容量などをよく吟味し、自分に最適なNASを見つけてくださいね!
最後に、それぞれおすすめモデルを紹介して今回の解説は終了したいと思います。
※記事公開後にモデル更新が入っているので、それに合わせて最新モデルにリンクを差し替えています。ご了承ください。
【追記】この記事をアップ後に、「TerraMaster」さんから「TerraMaster F2-220」「TerraMaster F2-221」NASキットの提供を頂きました。これが欠点もあるものの、予想以上に管理人の使用環境にマッチしており、現在メインNASとして運用中。記事もアップ済みなので、良かったらご検討くださいね。
今回管理人が購入したNAS:Synology DS216j(後継DS220j)
NASの定番メーカーと言えば「Synology」でしょう。ただしHDDは内蔵されていないので別途購入する必要があります。耐久性を重視するなら、HDDは「WD Red」×2がおすすめです。
手軽にNASを試してみたいなら:I-O DATA NAS 2TB 初心者モデル
I-O DATA製&1万円ちょっとでHDD付き。ただしシングル構成なので、とりあえずNASを試してみたい場合におすすめ。
HDD内蔵の2ベイ「完成品」タイプ:BUFFALO NAS データを守るRAID1搭載 4TB
自分は以前この旧機種を使用していました。MacのTimemachine設定などは簡単に出来ましたので、基本的な使い勝手は悪くなかったです。ただし、Bufffaloはアプリが使いにくい印象でした。PCメインでバックアップ用途や動画、写真の共有であれば問題ないでしょう。4TBとなっていますが、RAID1構成で使う場合は実質2TBとなる点はご注意を。
Synologyも良いけどこっちも気になる!:QNAP TS-231K
最後まで管理人が悩んだのがQNAPの製品です。価格と性能を見比べて検討してみると良いでしょう。こちらも別途HDDは購入する必要がある点はご注意を。
欠点もあるが、コスパは抜群!「TerraMaster F2-221」がいい感じ!
「TerraMaster」さんはNASの新興メーカーで、まだ正直言ってアプリの充実度ではSynologyなどにはかないません。それでも知名度が低い分、同価格帯で比べればスペックは高め。メンテナンス性も高く、アルミ製ケースで外観もカッコよく、かつ放熱性も優れていて個人的には気に入っています。なんといってもSynologyのNASよりもMacの「TimeMachine」バックアップ機能が簡単に使えるため、現在は我が家のメインNASとして活躍中!なかなかおすすめですよ!
※こちらも別途HDDは購入する必要があります。
※現在はF2-221が販売中となっているのでリンクを差し替えています。
コメント